多項定理

自然数 $n,\ m$ に対して, $(x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{m})^{n}$ の展開式は多項定理より次で与えられる.
$$(x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{m})^{n}=\displaystyle\sum_{\begin{array}{c}\\k_{1}+\cdots +k_{m}=n\\ 0\leq k_{j},\ 1\leq j \leq m\end{array}} \frac{n!}{k_{1}!k_{2}!\cdots k_{m}!}x_{1}^{k_{1}}x_{2}^{k_{2}}\cdots x_{m}^{k_{m}}$$

二項定理では2変数( $x_{1},\ x_{2}$ )であったが、多項定理では m 変数の場合に拡張される.

二項定理は $(x_{1}+x_{2})^{n}$ を展開したとき $x_{1}^{n-k}x_{2}^{k}$ の係数は ${}_{n}\mathrm{C}_{k}$ となることを意味していたが, 多項定理では $(x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{m})^{n}$ を展開したとき $x_{1}^{k_{1}}x_{2}^{k_{2}}\cdots x_{m}^{k_{m}}$ の係数は $\frac{n!}{k_{1}!k_{2}!\cdots k_{m}!}$ で与えられる. (ただし, $k_{1}+\cdots +k_{m}=n$ かつ 各 $k_{i}\geq 0$ とする. )

例えば, $(x_{1}+x_{2}+x_{3})^{3}$ の展開式における $x_{1}^{2}x_{2}^{1}$ の係数は $\frac{3!}{2!1!0!}=3$ で与えられる. ( 注:$0!=1$ )

二項係数と同様に、 多項係数として

$$\frac{n!}{k_{1}!k_{2}!\cdots k_{m}!}=\left(\begin{array}{ccc} \ &n & \\k_{1}&\cdots & k_{m}\end{array}\right)$$

と表すこともある.

$(x+2y+5z)^{7}$ の展開式における $x^{2}y^{2}z^{3}$ の係数を求めよ.

$(x+2y+5z)^{7}$ の一般項は

$$\frac{7!}{k_{1}!k_{2}!k_{3}!}x^{k_{1}}(2y)^{k_{2}}(5z)^{k_{3}}=\left(\frac{7!}{k_{1}!k_{2}!k_{3}!}2^{k_{2}}5^{k_{3}}\right)x^{k_{1}}y^{k_{2}}z^{k_{3}}$$

で与えられるので, $x^{2}y^{2}z^{3}$ の係数は $k_{1}=2,\ k_{2}=2,\ k_{3}=3$ を代入すれば

$$\frac{7!}{2!2!3!}2^{2}5^{3}=105000$$

を得る.

$(1+x+2x^{2})^{5}$ の展開式における $x^{3}$ の係数を求めよ.

$(1+x+2x^{2})^{5}$ の一般項は

$$\frac{5!}{k_{1}!k_{2}!k_{3}!}1^{k_{1}}x^{k_{2}}(2x^{2})^{k_{3}}=\left(\frac{5!}{k_{1}!k_{2}!k_{3}!}2^{k_{3}}\right)x^{k_{2}+2k_{3}}$$

で与えられる. $x^{3}$ の項は $k_{2}+2k_{3}=3$ となるときなので, $(k_{2}, k_{3})=(1,1),\ (3,0)$ の場合が考えられる.

このとき, $k_{1}+k_{2}+k_{3}=5$ より, それぞれの組合せは $(k_{1}, k_{2},k_{3})=(3,1,1),\ (2,3,0)$ となる. よって求める $x^{3}$ の係数は

$$ \frac{5!}{3!1!1!}2^{1}+\frac{5!}{2!3!0!}2^{0}=50$$

となる.