関数 $f(x)$ を $x=a$ でテイラー展開すると以下のように表される.$$f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f”(a)}{2!}(x-a)^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+\cdots$$ ただし $f^{(n)}(x)$ は関数 $f(x)$ の $n$ 回微分を表している.
このように $f(x)$ が無限級数で表されるとき, これを $f(x)$ の $x=a$ におけるテイラー展開という.
テイラー展開によって関数 $f(x)$ は多項式で表すことが可能となる.
注意:テイラーの定理において $n\rightarrow \infty$ とすればテイラー展開の式を得るが, そのとき剰余項 $R_{n}=\frac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^{n}$ ($a$<$c$<$x$)は $n\rightarrow 0$ で $R_{n}\rightarrow 0$ に収束する必要がある. (すなわち, すべての関数 $f(x)$ がテイラー展開できるわけではない.)
例題(テイラー展開)
$f(x)=\log x$ を $x=1$ でテイラー展開せよ.
解答:$f(x)=\log x$ とする. このとき
- $f'(x)=\frac{1}{x}=x^{-1}$
- $f”(x)=-x^{-2}$
- $f^{(3)}(x)=(-1)(-2)x^{-3}=2x^{-3}$
- $\cdots$
- $f^{(n)}(x)=(-1)^{n-1}(n-1)!\ x^{-n}$
となるので
- $f'(1)=1$
- $f”(1)=-1$
- $f^{(3)}(1)=2$
- $\cdots$
- $f^{(n)}(1)=(-1)^{n-1}(n-1)!$
よって $f(x)=\log x$ を $x=1$ でテイラー展開すると
$\begin{eqnarray*}f(x)&=&f(1)+\frac{f'(1)}{1!}(x-1)+\frac{f”(1)}{2!}(x-1)^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(1)}{n!}(x-1)^{n}+\cdots\\&=&0+\frac{1}{1!}(x-1)+\frac{(-1)}{2!}(x-1)^{2}+\cdots +\frac{(-1)^{n-1}(n-1)!}{n!}(x-1)^{n}+\cdots\end{eqnarray*}$
ゆえに次を得る:
$\log x=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n}(x-1)^{n}$
注意1: $n\rightarrow 0$ で $R_{n}\rightarrow 0$ に収束する条件として $|x-1|<1$.
注意2:$f(x)=\log x$ は定義域が $x>0$ なので $x=0$ でテイラー展開できない. $x=0$ でテイラー展開する場合は $f(x)=\log (1+x)$ とする場合が多い.
マクローリン展開
関数 \(f(x)\) を \(x=0\) でテイラー展開すると
$$f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f”(0)}{2!}x^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n}+\cdots$$
となりこれをマクローリン展開と呼ぶ.
$a=0$ (原点まわり)の特別な場合のテイラー展開はマクローリン展開呼ばとれる.
全国共通の「ありがとう」だって場所が違えば「おおきに~」といい方が変わるように, 場所($a$)が変われば、言い方(呼び方)が変わること同じである.
例題(マクローリン展開)
$f(x)=\mathrm{e}^{x}$ をマクローリン展開せよ.
$f(x)=\mathrm{e}^{x}$とおくと
$f'(x)=\mathrm{e}^{x},\ f”(x)=\mathrm{e}^{x}, f^{(3)}(x)=\mathrm{e}^{x},\ \cdots, f^{(n)}(x)=\mathrm{e}^{x},\ \cdots $
$f(0)=1,\ f'(0)=1,\ f”(0)=1,\ f^{(3)}(0)=1,\ \cdots, f^{(n)}(0)=1,\ \cdots $
以上より $f(x)=\mathrm{e}^{x}$ のマクローリン展開は
$$\begin{eqnarray*}f(x)&=&f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f”(0)}{2!}x^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n}+\cdots\\&=&1+\frac{1}{1!}x^{}+\frac{1}{2!}x^{2}+\cdots +\frac{1}{n!}x^{n}+\cdots\end{eqnarray*}$$
代表例(マクローリン展開)
\begin{eqnarray*}&&\sin x=x-\frac{1}{3!}x^{3}+\frac{1}{5!}x^{5}-\cdots +\frac{(-1)^{n}}{(2n+1)!}x^{2n+1}+\cdots\\ &&\cos x=1-\frac{1}{2!}x^{2}+\frac{1}{4!}x^{4}-\cdots +\frac{(-1)^{n}}{(2n)!}x^{2n}+\cdots\\ &&\log(1+x)=x-\frac{1}{2}x^{2}+\frac{1}{3}x^{3}+\cdots +\frac{(-1)^{n-1}}{n!}x^{n}+\cdots\\ &&(1+x)^{\alpha}=\left(\begin{array}{c}\alpha\\0\end{array}\right) +\left(\begin{array}{c}\alpha\\1\end{array}\right)x +\left(\begin{array}{c}\alpha\\2\end{array}\right)x^{2}+\cdots +\left(\begin{array}{c}\alpha\\n\end{array}\right)x^{n}+\cdots\ (|x|\text{<}1)\end{eqnarray*}
注意:$f(x)=\log x$ は定義域が $x>0$ なのでマクローリン展開( $x=0$ でテイラー展開)できないので, $f(x)=\log (1+x)$ としている.
注意2:$\left(\begin{array}{c}n\\k\end{array}\right)$ は二項係数と呼ばれ, $\left(\begin{array}{c}n\\k\end{array}\right)=\frac{n\cdot (n-1)\cdots (n-k+1)}{k!}=\frac{n!}{k!(n-k)!}$ で与えられる. → 詳しくは二項係数を参照
証明概要
テイラーの定理において $b=x$ とおけば次が成り立つ:
関数 $f(x)$ は $x=a$ を含む区間で $n$ 回微分可能ならば, ある $c$ ($a$<$c$<$x$) が存在し次が成り立つ: $$f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+\frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^{n}$$ ただし $R_{n}=\frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^{n}$ とする.
定理における $R_{n}=\frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^{n}$ は剰余項と呼ばれ, 関数 $f(x)$ を多項式で近似した場合の誤差となる.
$$f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f”(a)}{2!}(x-a)^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}$$
を $f(x)$ の$ n$ 次近似といい, 関数 $f(x)$ を $n$ 次多項式で近似することが可能となる.
さらに$n\rightarrow \infty$ で $R_{n}\rightarrow 0$ となるとき, $f(x)$ は無限級数で表されることとなる. つまり
関数 $f(x)$ は $x=a$ を含む区間で $\infty$ 回微分可能で, $n\rightarrow 0$ で $R_{n}\rightarrow 0$ ならば次が成り立つ: $$f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f”(a)}{2!}(x-a)^{2}+\cdots +\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^{n}+\cdots$$ ただし $R_{n}=\frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^{n}$ とする.